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2018年5月 9日 (水)

インボイス方式の導入による免税事業者への影響

(1) 免税事業者への影響

前回のブログでご説明した様にインボイス方式の導入により最も影響を受けるのが免税事業者です。事業開始2年間又は基準期間(その年又は事業年度開始の日の2年前の日の属する年又は事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合、基本的に消費税の納税義務が免除されていますが、インボイス方式の導入によりこの免税事業者が激減することが予想されます。

 

 

インボイス方式の要件を満たす適格請求書等を発行するためには、適格請求書発行事業者登録申請をする必要があります。ところが免税事業者はこの登録申請ができず、登録申請を行うためには、課税事業者を選択する必要があります。

 

免税事業者が課税売上を行った場合、仕入側は適格請求書等がないため仕入税額控除が受けられず、結果として免税事業者からの仕入れを取り止めることになり、売上が激減することが予想されます。

 

 

(2) 免税事業者が適格請求書等を発行した場合の実務上の問題点

適格請求書等発行事業者の登録は平成33101日よりスタートします。例えば、平成33年の時点で課税事業者選択届出書を提出して登録だけを行い、実際に仕入税額控除が制限される平成35年以降、課税事業者を辞め、実際には免税事業者であるにも拘らず、登録番号を付した請求書を発行するケースも考えられます。

 

インボイスを発行できる事業者(課税事業者に限る)は全て公表される予定です。全ての事業者は、仕入の相手方が課税事業者と免税事業者のどちらか判定できるため、免税事業者が「課税事業者である」と言い張ることはできません。

 

ただし、仕入側で相手が課税事業者かどうかの判定を逐一判定することは実務上難しく、登録番号が付されていることを理由に仕入税額控除を行った後、税務調査で相手方が免税事業者であることが発覚した場合、そのペナルティを誰が受けるのか不明瞭な部分が多く、引き続き動向が注目されます。

 

 

(3) 免税事業者のままでも影響が少ないと思われる具体例

免税事業者が窮地に追いやられることは確かですが、以下の者は免税事業者のまま事業を続けていくことも可能であると思われます。

 

① 自身の行う資産の譲渡等が、相手方の経費となりにくい場合

例)美容院、マッサージ等

 

② 自身の行う資産の譲渡等が、非課税取引や不課税取引に限られる場合

例)不動産賃貸業(居住用住宅、更地に限る)、医師、歯科医師(自費診療や課税資産の譲渡を除く。)、車いすなどの非課税製品の製造販売、株式トレーダー等

 

③ グループ企業とのみ取引をしている場合

 

①は一般消費者をターゲットに事業をしている者です。一般消費者は消費税の申告納税をすることがないので、控除ができる消費税かどうかは関係がないからです。②はそもそも消費税のかからない商売であれば、売上側が課税事業者でも免税事業者でも控除すべき消費税がないので影響がありません。③は仕入側で税額控除ができなくでも、売上側で納税しない恩恵を受けられるのであれば、実質的な納税額は同じになるためです。

 

但し、①の内、芸能人など美や健康を売りにする仕事をしている方の場合、美容院やマッサージの支払いが経費として認められる方もいらっしゃいます。芸能人などをターゲットに事業をやる場合には影響を受ける可能性もあるので、自身の業務内容と客層をよく考えて課税事業者を選択するべきかお決め下さい。

 

 

(4) 終わりに

2回にわたってインボイス方式について書きましたが、個別の問題に対応する細かな対応がまだ整備されていないと感じます。免税事業者のままでも影響が少ないと思われる具体例についても、消費一般に広く公平に課税するという消費税の原則から今後何らかの措置がされる可能性は高いです。具体的な取り扱いが決まったものについては、本ブログでまたご報告致します。

(Hipon)

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