2020年9月15日 (火)

配偶者居住権等の消滅時の課税関係

民法改正により≪配偶者居住権等≫が創設され、被相続人が亡くなった後も、
その配偶者が被相続人の居住用家屋に賃料の負担なく住み続けることができるようになりました。
従前は、相続後も引き続き住み続ける場合は家屋とその敷地を配偶者が取得する必要がありましたが、
取得した不動産の評価額が大きくなってしまった場合、他の遺産を取得することができなくなり、
住む場所は確保できても生活資金の確保ができなくなるといった問題がありました。
そこで、配偶者居住権等を設けることで、その権利の存続期間の間は無償で引き続き住むことを可能とし、
配偶者居住権等は家屋とその敷地の評価額よりも小さいため、他の遺産を取得することも可能となりました。
今後は分割協議の中や遺言で配偶者居住権等を設定するケースがでてきそうです。
※遺言で設定する場合は、相続させる遺言ですと注意が必要です。

今回は、配偶者居住権等が消滅した場合の課税関係についてまとめてみました。

・相続により消滅した場合
  配偶者居住権を有していた配偶者が死亡した場合には、民法の規定により予定通り配偶者居住権が消滅することとなります。
  この場合は、家屋とその敷地の所有者に相続を原因として移転する財産はありません。
  そのため、家屋とその敷地の所有者に対して相続税が課されないこととなります。
  また、配偶者居住権の存続期間が終身でない場合で、存続期間が満了した時は、同様の理由で贈与税が課されないこととなります。
  (相基通9-13の2の注意書き)

・配偶者居住権の存続期間の満了前に無償で消滅した場合(贈与の場合)
  配偶者から家屋とその敷地の所有者への贈与となります。
  この場合は、配偶者が有していた配偶者居住権等を、贈与の直前の価額で、家屋と敷地の所有者が無償で取得したものとし、
  贈与税が課されることとなります。
  (相基通9-13の2)

・配偶者居住権の存続期間の満了前に評価額よりも低い価額で配偶者が所有者へ譲渡した場合(みなし贈与の場合)
  対価の額と譲渡の直前の配偶者居住権等の価額との差額を、所有者が贈与により取得したものとし、贈与税が課されることとなります。
  (相基通9-13の2)

・評価額よりも高い価額で配偶者が所有者へ譲渡した場合
  配偶者居住権等の譲渡所得は“総合課税”として、配偶者に所得税等が課されることとなります。
  この場合の短期譲渡か長期譲渡かの判定ですが、被相続人の家屋とその敷地の取得の時期を引き継いで判定します。
  (所令82)
 ※配偶者居住権等の目的となっている家屋とその敷地を所有者が第三者に譲渡した場合も考えられ、
  この場合の所有者の譲渡所得は“分離課税”となります。

相続や存続期間の満了による消滅時の課税がないことから、冒頭で述べた本来の意図とは違う形で利用するケースも考えられそうです。
(二次相続までシミュレーションをすると節税効果がある場合も…)
また、配偶者が施設や入所するとなった場合に、資金確保のため譲渡したときに課税関係が発生することを念頭に置いて、
相続人や遺言作成希望者へご紹介した方がいいですね。

y.s

所有者不明の土地等の固定資産税の課税について

相続未登記の連鎖に伴う、ネズミ算的な所有者不明土地の増加については、土地の有効利用の障害となり、治安の悪化等の問題が生じています。
 2016年時点の全国の所有者不明率は約20%、所有者不明土地面積は約410万haにのぼります。 
 (参照:所有者不明土地問題研究会最終報告概要

 このような所有者不明土地は、自治体においては、固定資産税の賦課徴収事務における現所有者の特定のために多大な時間と労力を要すこととなり、現所有者を特定できない場合には固定資産税を課すことができない、という問題がありました。

 そこで、令和2年度税制改正において、①現に所有しているものの申告の制度化、②使用者を所有者とみなす制度の拡大、の措置が講じられています。

 ① 現に所有しているものの申告の制度化
 登記簿上の所有者が死亡した場合、市町村は条例で定めるところにより、現所有者(相続人等)に対して、住所その他の固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとされました。 
 令和2年4月1日以後の条例の施行日以後に現所有者であることを知った者について適用されます。


 ② 使用者を所有者とみなす制度の拡大
 一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかにならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができることとされました。
 こちらは、令和3年度以後の年度分の固定資産税について適用されます。
 したがって、所有者不明土地を使用している方は、令和3年度以後、固定資産税が課される可能性がある点に留意が必要です。

 
 所有者不明土地の経済的損失は、2017年から2040年の累積で約6兆円と試算されています。

 現在、法務省の法制審議会では、相続登記の義務化についての検討が進んでいますし、
 併せて一定の条件により土地の放棄を認める制度(土地所有権放棄制度)も創設される見込みです。

 今後も所有者不明土地の増加防止、解消に向けて様々な施策が講じられることと思われます。 

 

(T.I.)
 

2020年9月14日 (月)

レジ袋の有料化がスタート

令和2年7月1日より、全国でレジ袋の有料化がスタートしました。

 

経産省によると、

有料化することによって、それが本当に必要かを考え、

ライフスタイルを見直すきっかけとし、

プラスチックの過剰な使用の抑制を目的としているそうです。

 

これを機に我が家でもエコバックを持参して買い物をするケースが増えました。

一方、これまではレジ袋をゴミ袋として再利用していましたので、

レジ袋をもらわなくなり、ごみ袋を別途を購入しなくてはと考えています。

プラスチックの削減に寄与できるかは、、、

コロナ禍のさなか、袋の使いまわしは衛生上どうなのかという議論も出ているようです。

 

レジ袋の消費税は標準税率の10%が適用されます。

消費税10%のものだけを購入した場合は問題ありませんが、

軽減税率の8%が適用される場合には仕訳を分ける必要がありますので、注意が必要です。

 

sato

国民健康保険料の減免制度(新型コロナウイルス感染症の影響によるもの)

 

 国民健康保険加入者には7月頃に自治体から国民健康保険料の通知書が届いたかと思います。しかしこのご時世、納付が困難な方も多いかと思います。

 そこで国が国民健康保険料の減免措置を発表しました。新型コロナウイルス感染症の影響により、主な生計維持者の事業収入・給与収入等が前年より一定程度減少した世帯は、申請により、国民健康保険料が減免される場合があります。

 

・対象世帯

 1.新型コロナウイルス感染症により、世帯の主たる生計維持者が死亡又は重篤な傷病を負った世帯

 2.新型コロナウイルス感染症の影響により、世帯の主たる生計維持者の事業収入、不動産収入、山林収入又は給与収入(以下「事業収入等」という。)の減少が見込まれ、次の(1)から(3)のすべてに該当する世帯

 (1)2019年と比べて収入が3割以上減少する見込みである。
 (2)2019年の合計所得金額が1,000万円以下である。
 (3)減少することが見込まれる世帯の主たる生計維持者の上記事業収入等に係る所得以外の2019年の所得の合計額が400万円以下である。

 

・減免額

 1.り患世帯 

 全額


 

 2.減収世帯


 減免額の算出方法


 減免額=対象保険税額(A×B/C)×減免割合


 対象保険税額=A×B/C


 A:国民健康保険税額(納期限が過ぎていないもの)
 B:生計維持者の減少見込みの事業収入等に係る前年所得(複数ある場合は合計)
 C:生計維持者及びその他国保加入者全員の前年所得の合計


減免割合
生計維持者の前年の合計所得金額 300万以下 400万円以下 550万円以下 750万円以下 1,000万以下
減免割合   10割    8割    6割    4割    2割

 

・過去分の減免

 自治体によっては平成31年度の保険料も減免の対象となるようです。(令和2年2月3月 納期分など)

 

・申請方法等

 各自治体のサイトをご覧いただき、書類をダウンロードし郵送するところが多いようです。

 申請期限は来年3/31のところが多いようです。

 

 まずは各自治体が公表している情報を確認をしてから問い合わせをして下さい。

 また申請をしても減免決定までに納期限が到来するものは納付する義務があります。

 なお減免申請の決定通知が来たら納めすぎたあればその分は還付されます。

 該当する方はお早めに申請したほうがよろしいと思います。

 

 (小林)

~電子契約~

 電子契約とは、紙の契約書に印鑑を押印していた従来に代わり、電子データに電子署名をして取り交わされる契約のことで

契約内容が電子データの形で作成されますが、書面による契約と同様の証拠力を認められています。

以下の表は書面契約と電子契約を比較したものになります。

 

    紙の契約書 電子契約
形式   紙に印字された書面 電子データ
証拠力 押印 印鑑と印影 電子署名
本人性の担保 印鑑証明書 電子証明書
安全性の担保 契約・割印 タイムスタンプ
事務処理 送付 郵送もしくは持参 インターネット通信
保管 書棚・倉庫など サーバー
印紙 必要 不要
法的証拠力   効力有 本人電子署名があれば効力あり

 

メリットとして大きな点は印紙税がかかりません。国税庁は課税対象となる文章の定義を「紙の原本」としているためです。

その他、送付・保管といった事務処理も電子と書面では異なります。

紙代、郵送代、保管するための倉庫や書棚、どこにしまったかわからなくなり探す時間など、コスト削減は図れます。

 

ただ、ここで関係するのが税法での電子帳帳簿保存法です。

契約の締結業務を電子化できたとしても税務上は契約書をデータのまま保管できず結局紙に印刷して書類を保管しなければ

ならなくなると電子化のメリットを活かせなくなります。

税務の観点では電子帳簿保存法に対応したシステムを採用することが重要です。

最近ではクラウドの電子契約サービスが増えてきており

一からシステムを作るよりこれらのサービスを利用する方が簡単で便利です。

また、自社で導入できたとしても、社外の取引先を巻き込んで要望を聞いてもらうのは大変な作業です。

契約の締結は相手の合意によって行われるものなので、取引先の理解を得ることが一番重要な作業になります。

 

その他、デメリットとしてサイバー攻撃のリスク、社内及び社外への調整や周知、運用のフローなどの課題はあります。

電子契約が認められていない契約がある限り、どうしても書面での契約が残ってしまう可能性は高いです。

書面が残ることを前提として業務全体で効率化することを考えていくことがいいと思います。

例えば紙の契約書は取り込んで一つのファイルに保管すれば一括して管理ができるようになります。

これは一般的な文章や書面の保管の方法にも言えることだと思います。

今後は法令も変わり電子契約で処理できる業務の幅も広がっていくことは容易に想像できるため

現時点ではどこまでが可能か不可能かピックアップするだけでも次につながるのではないでしょうか。

 

<注意>電子契約の認められない契約

*定期建物賃貸借契約、定期借地契約、投資信託契約の約款、特定商品取引法で書面交付義務が定められているもの

 

<参考>国税庁電子帳簿保存法関係

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm

 

t.w

役員退職金の計算における最終報酬月額の注意点

(1) はじめに

役員に退職金を支給する場合、一般的には当該役員の最終報酬月額×勤続年数×類似法人の功績倍率の平均値という算式に基づいて計算を行います。

役員の退職金は役員の一存で決めることができてしまうことや、退職金に課される所得税率も低いため、無制限に支出してしまうと課税の公平性を損ねることから一定の制限がされています。

 

上記算式を無視して役員退職金を支給することは可能ですが、過大と認められる部分は、法人税法上は役員賞与として損金算入ができなくなります。また、所得税法上も退職所得として扱われずに高い税率が課されます。

 

検討すべきポイントが多い役員退職金ですが、今回は最終報酬月額について解説します。

 

 

(2) 退職年の役員報酬を上げて退職金を増やすことは可能か?

役員報酬は最終報酬月額をベースに計算するため、退職年の役員報酬を上げれば、それだけ多くの退職金を支給することができます。

 

ただし、増加額については慎重な検討が必要です。

業績の向上や職務内容の増加などの合理的な理由があれば増額可能であると思われますが、売上や利益が横ばいにもかかわらず、多少職責が増えただけで何十万円も役員報酬を増やした上で退職金を支給するのは危険です。

 

実際に役員が入退院を繰り返すようになってから役員報酬を上げて支給した役員退職金が過大なものとして否認された事例は数多くあります。過去の売上や利益を比較し、役員退職金だけではなく、過去に支出した役員報酬も過大であるとして否認された事例もあります。

 

 

(3) 最終報酬月額となる役員報酬とは?

税務上認められる役員報酬は、一般的に使われる定期同額給与の他、事前確定給与、利益連動給与があります。

この内、社会保険料の減額や年金受給額の増加を目的として、役員報酬の総額は変えずに、定期同額給与を減額して事前確定届出給与を支給することがあります。

 

ただし、残念ながら事前確定給与は最終報酬月額には加味されません。

ある裁決事例では、最終報酬月額(定期同額給与)はその退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を最もよく反映しているため、事前確定届出給与を加味することに合理性があるとは言えず、最終報酬月額は定期同額給与の額になる」として定期同額給与以外の金額を加味することを認めませんでした。

 

こちらも長期間事前確定給与を適用し、退職年度のみ役員退職金の支給に備えて定期同額給与に変更すると否認される可能性がありますので十分お気を付け下さい。

 

 

(4) まとめ

事業承継税制の特例措置により、今後しばらく役員の退職が多くなることと思います。

今回ご説明した最終報酬月額だけでなく功績倍率など役員退職金を決めるためには気を付けるべき点が数多くあります。

金額が大きくなるため、税務調査でも重点的に見られますので、税理士とご相談の上慎重にご検討下さい。

 

 

HIPON

新型コロナウイルス感染症の影響により支給される助成金・給付金の法人の会計・税務上の注意点

最近は、新型コロナウイルス感染症対策と並行して熱中症対策を行わなければいけなく過ごしにくい日々が生じていると思います。

今回は、新型コロナウイルス感染症により受ける下記の会計上・税務上の注意点について
触れていきたいと思います。

・雇用調整助成金
・法人税
益金に算入します。

・消費税
助成金は不課税となります。

・計上時期
雇用調整助成金の収入の計上時期は、実際に入金のあった時ではなく、休業を実施した月となります。
決算をまたぐ場合で、受給が未確定の場合は、見積もり計上して収入として計上しなければなりません。

参考
(法人税基本通達2-1-42
法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

・所得拡大税制
雇用調整助成金における休業手当については、所得拡大促進税制の判定で給与等に含めますが、
受給が未確定の場合で見積もり計上している収入について給与等から控除して計算を行わなければいけません。

所得拡大税制を検討する場合は注意が必要です。


・持続化給付金
・法人税
益金に算入します。

・消費税
給付金は不課税となります。

・計上時期
持続化給付金の収入の計上時期は、支給決定を受けた日に収入として計上しなければなりません。
なお、持続化給付金の振り込みのお知らせという葉書が事務局から送られてきます。

この葉書が届く前に口座へ入金される場合もあります。
その場合、いずれか早い日が収入計上日となります。


・家賃支援給付金
・法人税
益金に算入します。

・消費税
給付金は不課税となります。

・計上時期
家賃支援給付金の収入の計上時期は、持続化給付金と同様に支給決定を受けた日に収入として計上しなければなりません。

雇用調整助成金のみ取扱いが異なるので注意しましょう!

ビッキー

 

 

 

歩道上空地の評価

歩道上空地とは、コンクリートブロックを石垣風に突き詰めた舗装がされている道で、マンションの開発等の際に市の開発行為等の指導要綱に基づいて設置される土地をいいます。マンション住人の私有地でありますが、一般の人が自由に通行でき、歩道と一体で歩行者空間を確保することが目的です。 

この歩道上空地の財産評価は、一定の要件を満たす場合には「財産評価基本通達24」(私道の用に供されている宅地の評価)に基づいて評価をし、また一般の用に供されている道はゼロ評価になります。

平成29年以前は明確な評価規定がなく、判決で一定の指針が出されたことでH29年以降上記評価が提示されました。もし、以前に歩道上空地を私道評価(あるいはゼロ評価)としないで申告してきた場合は、相続税なら法定申告期限から5年以内であれば更正の請求をすることができることとなっています。

この歩道上空地については、固定資産税についても一般の用に供されている場合は非課税となるようですが、歩道上空地ではなく空開空地となると、容積率等の制限緩和措置を受けるための土地として相続財産、固定資産税共に課税される為、役所で確認する必要があります。
C.C

固定資産税の減免と不動産業



(1) 固定資産税の減免

新型コロナウイルスの影響で売上高が減少している中小事業者等への支援措置として「固定資産税の減免特例」が創設されました。令和3年度課税分の固定資産税に限られますが、令和22月から同年10月までの任意の連続する3か月間の売上高が対前年同期比の減少率50%以上である場合には、課税が免除(減少率30%以上50%未満の場合には、2分の1に軽減)されます。

 

 

(2) 不動産業における適用除外

本特例は、多くの不動産を所有する不動産業から特に注目を集めていますが、残念ながら販売用不動産については「棚卸資産」に該当し、本特例の対象になりません。

 

固定資産税の課税対象は土地、家屋、償却資産ですが、本特例の対象資産は、その中の事業用家屋と償却資産に限定されています。ここでいう事業用家屋とは、減価償却費が法人税法上の損金(又は所得税法上の必要経費)に算入されるものでなければならず、減価償却費を計上することがない棚卸資産は事業用家屋には該当しません。

 

ただし、不動産販売業が所有する建物等全てが対象外となるわけではなく、例えば、展示用のモデルハウスなど、長期間的に利用する目的で「有形固定資産」に計上され、減価償却費を損金経理しているものは対象になるとのことです。

 

 

(3) 適用要件

特例の適用に当たっては、税理士や会計士などの認定経営革新等支援機関等に必要書類を提出し、売上高の減少等について確認の上、令和3131日までに各市町村等に申告する必要があります。


(HIPON)

持分の定めのある医療法人(経過措置医療法人)の出資持分の払戻課税

令和2年の税制改正により、持分ありの医療法人から持分なしの医療法人へ移行する場合の相続税・贈与税の納税猶予制度が適用期限を3年延長し、令和5年9月30日までとなりました(措法70の7の9~70の7の14)。

とはいえ、まだまだ当該移行はそれほど進んでいないようです。

今回は、持分ありの医療法人が、(個人)社員の退社時に出資持分の払戻を請求をされた場合の課税関係について確認しようと思います。

  1. 退社時の課税関係
    • 退社した社員
      • 出資持分の時価による払戻がされた場合には、当初出資金額を超過する部分については「みなし配当所得(所法25①五)」により課税されます。総合課税により税負担が大きくなる可能性があります。また、払戻の際に医療法人では20.42%(所法182二)の源泉徴収をする必要があります。
      • 出資持分の時価よりも高い価額で払戻された場合には、当該退社する社員に対して、医療法人の出資の評価(財基通194-2)と実際の払戻価額との差額が他の出資者から贈与を受けたものとして「みなし贈与(相法9)」税が当該退社社員に課税される可能性があります。一時所得や役員賞与等が課税されるとの説もありますが、税務上は自己株式の買取行為と同様とみなされているため、資本取引となり法人自体への課税関係への影響はないものと思われます。
    • 他の出資者
      • 出資持分の時価よりも低い価額で払戻された場合には、他の出資者の出資持分評価額が増加することになるため、医療法人の出資の評価(財基通194-2)と実際の払戻価額との差額が「みなし贈与(相法9)」とみなされ、他の出資者に贈与税が課税される可能性があります。
    • 医療法人の課税関係
      • 医療法人では、出資持分の払戻は自己株の買取と同様の取扱いのため、資本取引となり課税関係は無いものと思われます。
  2. 相続時の課税関係
    • 相続した社員
      • 非上場株式の場合、相続開始日以後3年10月以内に出資持分を当該法人に譲渡した場合には、みなし配当課税はされず、株式等に係る譲渡所得として譲渡所得税が課税されます(措法9の7)。また、相続税の取得費加算(措法39)の適用も受けることが可能です。一方、医療法人では、厳密には自己株の買取とは異なるため、このような規定はなく、みなし配当として課税されます。
  3. 出資持分の払戻の収入の時期
    • 払戻の時期
      • 出資持分の払戻について、収入の時期については所基通36-4(3)トで「払戻し・の事実があった日」としています。これは、社員総会決議等で払戻価額を確定した日を指しており、払戻金額ごとに収益を認識することではありません。従いまして、みなし配当による所得税が高額になることを避けるため5年分割で払戻すこと等した場合であっても、支払都度に課税するのではなく、社員総会決議等で確定した時点で一時に課税されることとなります。

 

水品

 

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